雪が降る町~追憶のletter~
「行ってきます」

今日は曇り空。
白いマフラーを巻いていつものバス停に向かう。


「行ってきます」


そう聞こえてきたのはやっぱり快斗の声だった。
立ち止って隣の玄関を見ると、昨日とは違う快斗の姿で私は不覚にも目が離せないでいた。


「おお。晶、はよ」
「おおおおはよ」
「“お”多くね?」

くしゃっと笑う快斗は今日はスーツ姿だった。
ネクタイを締めてトレンチコートを羽織っている姿はもう完全に大人の男の人で、昨日とのギャップと、昔との違いにまさか快斗相手にドキドキしてる。


「す、スーツも着るんだね」
「あ?ああ。基本はね。昨日は現場から直帰だったから。だって作業着でバスとか乗れないだろ」
「え?バス?」
「おめーと同じだよ」


笑いながら快斗はそう言った。
毎朝一緒になるなんて。中学生以来だけど、あの時はこんなにドキドキしていただろうか。


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