雪が降る町~追憶のletter~
「結城、東中だよな」
「え…?うん。そうだけど?」
「オレ、中央だから、離れちゃうんだよな…」
「うん…?」
人気のない非常階段の隅から声が聞こえた。
俺は“いけない”という理性よりもどうしても気になる衝動を抑えられなくて、息を潜めて壁に寄りかかった。
「……あの、だから…オレ、これからも結城に会いたくて…」
「…え?」
「つ、付き合わねぇ?」
「えっ!」
ドクンドクンと部外者の俺の心臓がうるさい程騒ぐ。
人の告白シーンなんて居合わせるものじゃない。
でも、俺自身がそれを選んだ。
多分、この場に居ても居なくても、今と同じ気持ちでいただろうから。
晶たちの沈黙が続く中、俺は何も出来ずにそこにただ立っていた。
だけど頭の中ではぐるぐるといろんなことを考えて。抑えきれず感情があふれ出そうになる。
小学生のくせに、付き合うってなんだよ。
ていうか、お前普段そんなに晶と親しかったかよ。
―――晶、お前はどうなんだよ――。
気持ちは今にも割って入りたい。
けど、その時の俺にはそんな行動力はなく、ただ苛立ちのまま、手を握りしめ晶の答えを待っていた。