雪が降る町~追憶のletter~

「ほんと、大丈夫?保健室行く?」
「うん。ちょっと立ちくらみみたいな感じになっただけ」
「そう?まぁ階段から落ちなくて良かったな!」
「あー…本当だ。大ちゃんのおかげ…」


『大ちゃん』……?


その言葉に焦点が定まってなかった俺の視線がまた晶を捕えた。
その時に晶も俺に気が付いて目が合った。


「か、快斗?」


その晶の呼びかけに背を向けていた“ダイ”も振り向く。


「お、快斗!」
「どうしたの?いつから、そこに…」


なんにも知らない二人は何食わぬ顔で俺に話しかけてきた。

俺は、この晶の近くにいた男が、小学校から一緒の2コ上の“ダイ”こと大地だという事実に心から安堵した。

どっかの知らない男じゃなくて、顔見知りのダイだったから。


「…ちょっと前。二人して俺に気付かないし」
「え?声かけろよ」
「…何か用だったの?」


晶が俺にそう聞くから、俺は『教科書を貸して』と言った。


「しっかりしてそうな快斗も忘れ物するんだな」


ダイが楽しそうに笑ってそういうと、さっさと階段を降りて戻って行ってしまった。

< 185 / 218 >

この作品をシェア

pagetop