雪が降る町~追憶のletter~
「ほんと、大丈夫?保健室行く?」
「うん。ちょっと立ちくらみみたいな感じになっただけ」
「そう?まぁ階段から落ちなくて良かったな!」
「あー…本当だ。大ちゃんのおかげ…」
『大ちゃん』……?
その言葉に焦点が定まってなかった俺の視線がまた晶を捕えた。
その時に晶も俺に気が付いて目が合った。
「か、快斗?」
その晶の呼びかけに背を向けていた“ダイ”も振り向く。
「お、快斗!」
「どうしたの?いつから、そこに…」
なんにも知らない二人は何食わぬ顔で俺に話しかけてきた。
俺は、この晶の近くにいた男が、小学校から一緒の2コ上の“ダイ”こと大地だという事実に心から安堵した。
どっかの知らない男じゃなくて、顔見知りのダイだったから。
「…ちょっと前。二人して俺に気付かないし」
「え?声かけろよ」
「…何か用だったの?」
晶が俺にそう聞くから、俺は『教科書を貸して』と言った。
「しっかりしてそうな快斗も忘れ物するんだな」
ダイが楽しそうに笑ってそういうと、さっさと階段を降りて戻って行ってしまった。