雪が降る町~追憶のletter~

バルコニーも向かい合っているならば、俺と晶の部屋も向かい合っているこの家の造り。

ただ、さすがに手の届く距離ではない。

俺は消しゴムをちぎって晶の窓に投げつけた。

3回目位で晶の部屋に影が出来て、すぐにカーテンが開けられた。

部屋の逆光ではっきりとは見えなかったけど、晶の顔は物凄く驚いたものだった気がする。

カララっと晶も窓を開けた。


「……な、なに?」
「んな、ビビらなくても」
「ビビるよ!こんな時間に、2階の窓から音がすれば!」
「はは、そりゃそうか!」


俺の笑いにつられたのか、晶の表情も少しづつ柔らかくなった。


「ちょっとここじゃ遠いから隣にこれる?」
「え?うん」


俺が誘うと、少し不思議そうな顔をして晶は返事をして窓を閉めた。




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