雪が降る町~追憶のletter~
俺は真っ青になった。
それはきっとすごく珍しい光景で。
晶がそんな俺をきょとんとした顔で見ていた。
「どうしたの…?」
晶の問いかけにまともに答えられる筈はなかった。
あの日、確かに俺は自分の手で書いた手紙を投函した。
だけど、その前―――…封を閉める直前。
俺は何度も思い返したが、やはり名前を書いていない気がする。
見直すことの恥ずかしさと、あまりそれを見ていると、晶へ渡す勇気が挫けそうで…。
だからって、まさかこんな大失態を犯していたなんて…!
「……快斗?」
俯いている俺を覗き込むようにして晶は近づいてくる。
―――言える訳、ない。
このタイミングで俺だと名乗れる勇気があるなら、もうとっくにそうやって面と向かって伝えてるさ。
それが出来ないから、あんなふうに女々しく手紙を送った訳で…。
「…晶…」
「え?なに…?」
「それで…その、手紙。なんて…?」
その手紙は99パーセント俺のもの。
それでも、もしかしたら、という思いで確認をする。