雪が降る町~追憶のletter~
ダイが“知ってます”って顔でそう言うから俺は驚いた。
まあ家が近所でそれなりに親も親しいから、そんな話が流れたんだろう。
そう容易に想像がついた俺は、ダイを見て答えた。
「―――ああ。ダイがまた先輩って微妙だけど」
「へぇぇ~~とか言って、ほんとは俺を追っかけたくせに」
「!!」
それはある意味本当のことで。
小学校と中学校で身近にいたダイのその進路を聞いて、俺は本当に感化されたのだから。
少し戸惑った時に空から白く光る粒が降って来た。
「あー降って来た。陽も沈みかけてるし。帰るか?」
「ああ……」
ダイがポケットから手を出して手のひらにその粒を拾いながらいう。
俺もその雪を見て同じようにポケットから手を出そうとした時に晶を思い出した。
いくら雪がすごくなったからって、晶なら帰らずにひたすらに待っていそうだ。
待ち合わせ場所に立つ晶を想像して俺はそう思った。
実際のところ、俺は晶の前に差出人として名乗り出るのをしないと決めてしまっていた。
すごく勝手だけど、心で何度も謝って。
でも、晶はどのみち傷つくんだ。
それは晶自身は誰につけられた傷かもわからないまま―――。
そして、それは紛れもなく俺がこれからつける、傷。
俺は手のひらに次々と降って来る雪をぎゅっと握りしめてダイの存在を思いだす。