雪が降る町~追憶のletter~
携帯を持たせてもらってから、一応晶にも連絡先は知らせた。
けど、俺から連絡することも出来なくて、晶からも滅多に連絡が来ることはなかった。
でも、学校を卒業し、社会人になる時にそれでいいと思った。
―――これ以上執着していても俺は変われない、と。
だから東京に就職が決まった時も、敢えて晶に直接連絡することをしなかった。
まぁ、母さんから伝わる話だろうけど。
新入社員として始まった生活は目まぐるしくて、余計な昔の想いを思い出すこともできなくてちょうどよかった。
その間に携帯が一度壊れてしまった時、正直晶がふと頭を過った。
それでも俺は、晶に新たな連絡先を教えることを躊躇いながら、やめた。
仕事に慣れた時に、初めてまともに付き合った彼女がいた。
「ねぇ。クリスマスは休める?」
「あー…どうかな…仕事、立て込んでるから」
「えぇー」
その時の彼女は職場の同期の繋がりから知り合った彼女。
顔も普通に可愛いとは思うし、別になにも問題はなかった。
「年末は?帰っちゃうの?」
「年末……」
雪が滅多に降らない空を見上げる。
あれから8年。
8年も経っているというのに、なぜこんなにも鮮明に、あの時の情景が、想いが、晶の顔が、浮かんでくるんだろう。