雪が降る町~追憶のletter~

「あたし、快斗の地元に行ってみたーい」
「……え?」
「何よぉ。その返事!嫌な理由でもあるの?」


その彼女は別に本気じゃなくて、冗談混じりでそう返してきた。

けど、俺の中でずっと、ずっと、消えずに残っているもの―――。


「…あたし、結構ホンキなんだけど?」


きゅっとジャンバーの袖口を掴みながら小さな声でそう言われた。
“ホンキ”―――それは、恐らく、将来のビジョンを投影してのこと。


「あー……」


俺だって別に遊びで今をこうして過ごしている訳じゃない。
けど、俺はなんて答えていいか纏まらずに、声を出しながらそのままポケットに手を突っこんだまま歩いていた。

その時。

ふと、目に入ったんだ。

シャレた老舗文具店のショーウインドウに飾られた、クリスタルの置物に。


「――快斗?」


俺はそのクリスタルに目を奪われて、足をピタリと止めた。

雪が降る景色のそれを見て―――俺はやっぱり……


「あの日の雪が、消えねぇ…」





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