雪が降る町~追憶のletter~
「じゃあ、お邪魔しました!」
「ああ」
再び2人はバルコニーに立つと、晶は自宅へ戻ろうと柵に手を掛ける。
すると快斗が掌を見せるように手を差し出してきた。
「ん」
これは手を取れっていう合図。
それはこの前も同じシチュエーションだった筈なのに、昨日快斗と帰り道に手を繋いだせいでその手を取ることが“特別”なことに思えてしまって晶は繋ぎかけた手を止めてしまう。
掴める距離なのに、掴めない手。
しかし晶の思いを無視するように快斗から晶の手を捕まえに来た。
「今日はあったけぇな、手」
「···室内にいたからね」
だけどきっとそれだけじゃなくて、さっき最後に交わしたあの会話が晶の体を熱くさせていた。