雪が降る町~追憶のletter~
「さ、さむっ!」
バスから降りると晶はお決まりのセリフを言う。
快斗は後から降りてその言葉を聞くと、呆れたように笑ってまた晶の手を取った。
(えっ··)
まさか2度目があるなんて思っていなかった。
だけど思っていなかっただけで、本心は期待していたのかもしれない。
だってこんなにあったかい手なら、誰だって心地いい筈だもの。
なんだかさっきの一言が、快斗に自分の手を取らせたようで晶はまた恥ずかしいやら気まずいやらと、俯きながら半歩先に進む快斗の歩調について歩いた。
「手袋、しねぇの?」
「つい、面倒で。定期出したりするときに脱ぐと片っぽなくしそうで···ていうか何度か失くして」
「ドジだな」
「今、紐付にしたらいいと思ったでしょ」
繋いでる手は大人の手。
けれど会話はずっと子ども染みた話。