雪が降る町~追憶のletter~
2人の沈黙の間には黒い空間に白い息があがっていく。
冬の夜はなぜだか夏よりも静かで、そんな小さな呼吸ひとつでさえも聞こえてくる気がする。


「そんなこと、ないよ。ない。」


晶は自分に言い聞かすようにして笑いながら呟いた。


“もうそんな話は終わりにして、早く帰ろう”


そんな雰囲気を出して晶が一歩大きく歩きだそうとしたら、繋がれた手に力を込められてその一歩以降を阻止された。


「あるよ」
「ど、して…快斗にわかるのよ」
「誰にだってわかる」
「誰にだってって···」


そうして晶の顔から笑顔が消えて戸惑いの目で快斗を見上げると、快斗が繋いだ手をそのままに少し上まで持ち上げた。


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