雪が降る町~追憶のletter~
「1時間位かかるって」


電話をすぐに終えた大地が『いや~珍しくすぐ快斗が電話に出た~』なんて笑顔で晶にそう報告すると、店員を呼んで注文を始めた。
晶の頭はメニューよりも快斗がくるということで一杯だ。


「晶ちゃん決まってなかった?」

「あ、ううん。じゃあコレ···」


決まってなかったのはメニューじゃなくて“心”だ。
快斗と会う。
心を決めて、開き直るしかない。
そもそも自分は悪いことしてない。···はず。


窓の外に顔を向けて、晶は一人延々とそんなことを考えていた。

すると、大地が色々と話をしてくれた。


高専での寮での面白い話。
仕事始めて睡眠時間なかった頃の話。
快斗とは、今の出張先の現場で偶然再会したという話――


「快斗は大ちゃんの影響で高専行ったようなものだものね」

晶は昔を懐かしむように大地に言った。


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