雪が降る町~追憶のletter~


「さて、今メシ食ったばっかだから、どっか行くか」


大地が仕切って席を立つと、晶と快斗にそう言って会計に行ってしまった。
その一瞬だが、完全に2人きりになってしまう。

目のやり場に困る晶はハンガーに掛けていたコートとマフラーを無心で身に纏う。
しかし快斗は晶と違って決して目を逸らしたりはしなかった。


「おーい、出るぞー」


大地の声に2人は後を追い店を出た。
3人で外に出ると、せっかくコーヒーで温まった体を一気に寒くさせる天気になっていた。


「···雪」


晶がそう言って掌を差し出し空から次々と零れてくる白い雪を拾う。

とうとう今年も降ってきた雪。
もうすぐ、この足元を一面の白に変える、雪。


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