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「あ?」
「赤外線、送信♪」
ぴろぴろりん♪
「はい」
手渡された携帯を開き、確認すると、そこには氷田君の番号が登録されていた。
「あ、ありがと」
「どういたしまして!」
その日、ベッドに寝転がって携帯とにらめっこをした。
「氷田、陣かぁ」
番号を知っているという、たったそれだけのことで、にやけてしまう。
まさかいきなり電話をかけるわけにもいかないし、メールもしようとは思わないけど、ただ知っているというだけで、繋がりができたような気がした。
「仲良くなれたらなぁ……」
このときの私は、淡い期待だけを抱いていた。
一目ぼれで始まった、小さな恋のつぼみを、どうやって花咲かせようかと。
ただ、そんな淡い期待を抱いていたのだ。