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友愛
「みあ、おはよ!」
「ん? あ、陣、おはよう」
大学生活も二年目になり、季節はまた、桜が舞い散る季節になった。
先輩に新入生の案内を強要された私達は、待ち合わせの場所で再会した。
「久しぶりだね」
春休みの間はメールのやり取りをしていたけど、やっぱりこうやって面と向かうと安心する。
あの初めての食事の後も、私達はことあるごとに二人で会って、時間をともにした。
馬鹿な話をして笑ったり、行き帰りを共にしたり、そんな普通の毎日が、私にとってかけがえのないものになった。
いつの間にか、みあ、陣と呼び合うようになり、私達は大学でも、一緒にいることが当たり前になった。
陣の灰色の瞳に自分が映るたび、自分が陣の特別になったような気がして……嬉しかった。
なまじ、一緒にいることに慣れてしまったせいか、陣のいない実家での春休みは、どこか足りなくて、味気なかったのだ。
「みあ~、久しぶり~っ」
「うぎゅっ」
陣が私のほっぺたを挟んで、むぎゅ~っと挨拶する。私はその手を振りほどいて、
「ちょっと、それやらなきゃ気がすまないの?」
笑いながら言った。
「だって、みあのほっぺ、ふわふわしてて美味しそうなんだもん」
「ごめんなさいね、太ってて」
「みあは太ってないよ」
正直、私の恋心は、消えてなくなってしまったわけではないと思う。
凍りついたまま、心の奥にはあるのだと思う。
だけど、凍りついた上に封をした感情を、今さら解放しようとは思わなくなった。
一緒にいられる心地よさと、友達でいられる気楽さに、私はすっかり満足していた。