Debug
並んで歩くことは、私達の当たり前。
一緒にいることは、私達の友情の表れ。
陣、私は、陣にとっての友達だよね。
陣、私は、陣のことが大好きだよ。
陣は、私のこと、友達としてでも、好きでいてくれる?
空が薄暗くなった頃、陣が迎えに来た。
「それじゃ、行こうか」
私はきちんと戸締りをして、陣の隣を歩く。
陣の隣を歩くとき、私はいつも少しだけ距離を置いている。
その距離感に、寂しさを覚えると同時に安心もしていた。
それは、それ以上、私が陣には近付かないという暗示のようにも思えたから。
この距離感は私にとって、心を封印するための、安全地帯なのだ。
「先輩達、きっと吐くまで飲むんだろうなー」
陣が呆れたように呟く。
「陣はそんなに飲んじゃ駄目だよ」
「飲まねぇよ」
私達の会話も、他愛もないものばかり。
それなのに。
「みあ」
「ん?」
陣が私の身体を、引き寄せた。
「っ?」
「夜道は、危ないから、あんまり離れないで」
陣は、優しい。
驚くくらい優しい。
だけど、陣、誰にでも優しいのは、優しさじゃないよ。
陣、貴方の優しさは、私にとっては、戸惑いにしかならないよ。
私の安全地帯を、奪わないで。
安全地帯が無くなったら、私は貴方に近付いてしまう。