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 陣は彼女が好きだから、私のことは友達として扱ってくれるだろうと思っていた。
 私も、彼女になれなくても、隣にいられるなら友達で良いやと思っていた。
 陣の右手の薬指に光っている指輪が、彼女の存在をいつも私に知らしめていたから。
 だからこそ、私は陣に対しての安全地帯をつくっていたのに。

 だけど、陣の行動は、友達に対する行為にしては度が過ぎている。
 手をつなぐのは、恋人達のすることだ。
 そして陣は、そうやって私の安全地帯を奪っていく。

 私は、危ないと思った。
 陣が私のことを、意識しているんじゃないかと思った。
 また、うぬぼれなのかもしれない。
 だけど、言いようのない不安が、私を襲っていた。
 何より、安全地帯というストッパーを失った私が、陣にのめり込むのが、恐かった。


「みあ、一緒に課題しよう」

 授業が始まり、最初の課題が与えられたとき、陣は真っ先に私に言ってきた。

「ん、いいよ」

 特に異論はなかったので、その日のうちに、大学帰りに私のアパートに行って、さっさと課題を終わらせてしまうことにした。


「さてと、始めよっか」
「おう」

 二人でパソコンのモニターを覗き込むと、身体が密着したようになる。
 それはいつものことなのに、今日は、びくんと身体を硬直させた陣が、私から離れた。

「……どしたの?」

 その行動があまりに不自然で、私は尋ねる。
 戸惑ったように私を見る陣は、真っ赤になっていた。
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