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期待
四月、桜の舞い散る季節。
私は空を仰いで、感嘆の息をもらす。
空の蒼と、桜の淡い桃が、私の心を満たしていく。
着慣れないスーツ姿で大学の構内に足を踏み入れた私は、佐川みあ。
今日から、この大学でプログラムについて勉強する。と、いきごんでいたものの、天性の方向音痴という才能が、私をこの異空間に連れてきた。
「うわぁ……ここ、どこ~……?」
地図や案内を見ても、わからない。
この馬鹿でかい敷地で、私は完全に迷子になってしまった。
半泣きになりながら、何かの建物の裏側に彷徨いこんだ私は、途方にくれていた。
「どうしよ~……式が始まっちゃうよ……」
ええいままよ、と、建物の表側に行ってみた。
そこでやっと、ちらほらとスーツ姿を見つけて、私は安堵のため息をついた。
彼らの後をついていこう。
歩き出した私は、構内に咲く桜に意識を向けた。
桜って本当に綺麗。
毎年毎年、絶対に飽きない。
〝本当に、綺麗だな……。っ!〟
私は、はっと一本の桜の木に目を奪われた。
いや、桜の木そのものではなく、その木を見上げている一人の男の子に。
〝か、かっこいい……〟
茶色っぽい柔らかそうな髪についた桜の花びらを取りながら微笑む姿が、私の目に焼きついた。
私は歩くのも忘れて、その姿に見とれてしまった。