Debug

「いやだ……」

 ぽろっと、涙がこぼれた。

「いやだぁ……っ」

 陣の、隣にいられなくなるのは、嫌だ。
 陣と友達じゃなくなるのは、嫌だ。

 なんで、こうなるの。
 私は友達で十分だったのに。
 どうして、陣、私のことなんか好きになったの。
 どうして、陣、私の安全地帯に踏み入ったの。
 私は、貴方の友達でいられるだけで、良かったのに。

 こんなこと、望んでいなかったのに。

 いや。
 本当にそうだろうか?

 陣の顔が、脳裏に浮かぶ。
 罪悪感でたっぷりの、蒼白な顔。
 だけど、本当はわかっていた。

 陣が私を好きになったんじゃない。
 私が、陣が私を好きになるように仕向けたんだ。
 本当は、私が悪いんだ。
 友達だと言いながら、どこかで陣を誘っていたに違いない。
 そうじゃなきゃ、陣が私のことを好きになるはずなんか、なかったんだ。
 いつも近くにいない彼女より、いつも隣にいる私に目を向けるように。

 だけど、陣の罪悪感たっぷりの顔は、私を深く傷つけた。
 私が、陣を、傷つけたんだ。

 選択肢は、いくつあるだろう。

 陣と離れる。
 なかったことにして、今までどおりつきあう。

 陣と離れるという選択肢が、最良なのはわかってる。
 だけど、私には選べなかった。
 私が、なにもなかったような顔をして。
 陣が、立ち直って。
 そうすれば、大丈夫になる。
< 43 / 96 >

この作品をシェア

pagetop