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「いやだ……」
ぽろっと、涙がこぼれた。
「いやだぁ……っ」
陣の、隣にいられなくなるのは、嫌だ。
陣と友達じゃなくなるのは、嫌だ。
なんで、こうなるの。
私は友達で十分だったのに。
どうして、陣、私のことなんか好きになったの。
どうして、陣、私の安全地帯に踏み入ったの。
私は、貴方の友達でいられるだけで、良かったのに。
こんなこと、望んでいなかったのに。
いや。
本当にそうだろうか?
陣の顔が、脳裏に浮かぶ。
罪悪感でたっぷりの、蒼白な顔。
だけど、本当はわかっていた。
陣が私を好きになったんじゃない。
私が、陣が私を好きになるように仕向けたんだ。
本当は、私が悪いんだ。
友達だと言いながら、どこかで陣を誘っていたに違いない。
そうじゃなきゃ、陣が私のことを好きになるはずなんか、なかったんだ。
いつも近くにいない彼女より、いつも隣にいる私に目を向けるように。
だけど、陣の罪悪感たっぷりの顔は、私を深く傷つけた。
私が、陣を、傷つけたんだ。
選択肢は、いくつあるだろう。
陣と離れる。
なかったことにして、今までどおりつきあう。
陣と離れるという選択肢が、最良なのはわかってる。
だけど、私には選べなかった。
私が、なにもなかったような顔をして。
陣が、立ち直って。
そうすれば、大丈夫になる。