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『それは、嫌だ。みあ、時間をくれ。もうちょっとしたら、大丈夫だから』

「っ……」

 涙が、こぼれ出る。
 ほら、私は卑怯だ。

「離れなきゃっ……いけないのに……っ!」

 陣が、いいよと言うから、私はまた彼の隣を選んでしまう。

 本当は駄目なのに。
 もう、キスの前には、戻れないのに。
 凍りついた感情は、すでに溶けて、動き出してしまっているのに。
 もう、友達ごっこは、できないに決まっているのに。

 自分が、嫌いだ。
 自分で決められない、自分が、虚しい。
 わかってるのに。
 間違いだと、わかっているのに。
 私はそれを、書き換えられない。
 エラーはそこだと、わかっているのに、それをデバッグできない。
 弱虫だから。
 甘いから。
 わかっているのに。
 だけど、陣が好きだから。
 彼を、失いたくないから。


 一週間、私達は言葉を交わさなかった。
 陣を見かけたけど、彼は傍目にも、やつれて見えた。
 そんな彼に、私が何かを言える、資格はない。


 この一週間、私は何かが欠けているような感覚がぬぐえず、恐かった。
 このまま、陣とは元に戻れないんじゃないだろうかと思って。
 夜中、何度も泣いた。
 本当は、わかっている。
 このまま離れてしまえば、いいと。
 だけど、陣のいない生活が寂しすぎて、辛い。
 だけど、陣がああやって、やつれているのを見るのも、辛いんだ。

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