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 そのあとに出逢ったのがあいつだ。
 愛されているのかもしれないと錯覚して、自分の気持ちを高ぶらせたのに。
 私はそのまま愚かにも、傷ついた。

 依存しているだけだろ。

 その言葉は、今も私を戒めている。
 不器用な私は、今もまた出口の無い迷宮で、必死に光を探していた。
 陣が私に優しくするほど、私は陣に優しくなる。
 陣が私に甘えるほど、私も陣に甘えられるようになる。
 陣が私を好いてくれるほど、私も陣をどんどん好きになって良いと勘違いする。
 そんな日々を繰り返すうちに、私は陣から離れられなくなっていく。

 私はただ、辛い恋愛を忘れるために新しい恋愛をしたかっただけなのに。
 私はまた、辛い恋愛を繰り返すように、陣と一緒にいる。

 私は、見つけ出せるのだろうか。
 デバッグの方法を。
 この複雑なエラーを解くような、新しいコードを。
 私に天使は、現れるのだろうか。


 そんな風に悩んでいる間にも、私は何も変わることができず、時間だけが非情にすぎていった。
 もちろん恋愛だけに悩んでいるわけにもいかず、学生の本分もきちんとこなしていた。
 アプリケーションの作成練習やレポートやなんやらと忙しくしている間に、時間の感覚もおかしくなり、一週間なんかあっという間に過ぎていき、一ヶ月という提出期間が迫ってくるたびに、頭のおかしくなりそうな日々を送っていた。

 そんな風に過ごしているうちに、いつの間にか季節はまた春を迎えていた。

 大学三期目の今年ある科目は、ソフトウェアエンジニアリングとデータベースについて等、来年の卒業論文のために必要なものばかり。そして難しいといわれるものばかり。
 前期はネットワークなどについての教科など。
 どれもこれも考えるだけで頭が痛くなってくる。

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