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「私、陣に付け入ったんじゃないかって……」
「そんなのみあの責任じゃない!」
ひゅかは驚くほど大きな声をあげた。
「そんなの、王子の勝手でしょ! 最初にみあに近付いたのは、王子だよ!」
「でも……」
「みあだって覚えてるでしょ、最初にみあに気のあるそぶりを見せたのは、王子だよ」
だけど、私は陣に彼女がいると知ってからも、一緒にいることを選んだ。
「だけど、これは陣だけが悪いんじゃなくて……私も悪いことだから」
二人で、エラーを起こしたのに、私達はそれを直そうともしないで、また複雑に書き換えようとしている。
そのことが目に見えてわかっているのに、一緒にいるのをやめられない。
「ひゅか……私は、陣と離れたくない」
「みあ……」
「好きなの。今、友達として一緒にいられるだけで、幸せなの」
その幸せと引き換えに、心は悲鳴を上げているけれども。
「……そんなの、みあが傷つくだけじゃない」
「わかってるよ」
私の手は、震えていた。
「わかってるよ、そんなこと。私が一番。
今だって、たくさんの人が私達のことを彼氏彼女だと思ってるみたいだけど、違うってわかってるのは私だよ。
彼女になれないってわかってるのも、私。
誰かが聞いてきて、ううん、違うよ、彼氏じゃないよって答えて傷ついてるのも私だよ!
でも、しょうがないじゃんっ! 離れたくないんだもん……っ
陣と一緒にいたくて、離れたら不安で……どうすればいいのよ?
私だってわかってるよ、このまんまずっと一緒にいられるわけじゃないって。一緒にいて良いわけじゃないって。
だけどね、今だけじゃない……今だけ、私にかりそめでも、夢を見せてくれたっていいじゃない……」
今まで、誰にも言えなかった思いを口にした。
吹き出すように流れ出た言葉だったけど、涙は出てはこなかった。