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「みあ、大丈夫?」
「え?」

 気づけば陣が不安そうに私を見ていた。

「いや、さっきから喋らないから……やっぱ、引いたかな……って」
「ううん。別にいいよ」

 私はぎゅっと陣を抱きしめる。陣もそれに答えてくれる。

 別にいいよ?
 全然良くなんかないのに。

「みあ、どっかでかける?」
「んー、どうしようか」

 調べ物は終わったし、五時前でそんなに遅い時間でもない。

「んじゃデートしよっか」
「はは、そうだな」

 私達は身支度を整えて、小店が並ぶ通りをぶらぶらすることにした。

「今度は映画とか見に行こうか」
「いいね」

 二人でわいわい話しながら一緒に歩く。
 まるで、さっき大きな罪を犯そうとしたことを忘れてしまったかのように。
 私は自然と陣の手を握ってしまう。そしてそれを陣は拒まない。

「あの店なんか可愛いな。入ってみよ」
「おう」

 手をつないだまま、私は店に入って――そのまま硬直した。

「みあ?」

 突然足を止めた私を不自然に思ったか、陣が振り返った。

「陣、行こう……」
「って、え?」
「みあ?」
「っ!」

 声をかけられて、私は立ち止まった。
 最悪だ。
 こんなときに、再会するなんて。
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