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「みあだよな?」
私は陣の手をしっかりと握り締めながら、振り返った。
そこにいたのは、その店の制服を着た立花健也だった。
「久し……ぶり……」
私はそっと陣の手を離して、その後ろに隠れるようにした。
「みあ、知り合い?」
「なんだ、お前男できたんだ?」
陣は、私の男なんかじゃない!
そう叫びたかったけど、私は何も言えなかった。
お前が依存してるだけだろ。
長い間私を捕らえ続けた言葉が、まざまざと蘇る。
萎縮して、怯える私を不自然に思ったのか、陣が健也に尋ねた。
「あんた、みあの何?」
瞬間、健也があざけったような顔をする。
「へぇ~、本当に男できたんだ。俺はまたこいつがお兄さんの彼女面してるだけかと思った」
「っ」
陣が驚いて、健也を見る。
「こいつさぁ、ちょっと前まで俺の彼女面して、付きまとってたの。そんでちょっとヤらしてもらおうっと思って誘っても、自分は彼女じゃないからって断るんだぜ。んじゃなんだよって、依存してるだけの寄生虫かよみたいな」
私は、この男の何を好きになったんだろう。
今となってはもう、思い出せなかった。
だけど健也の言うとおり。
私は陣に依存して、寄生しているだけ。
彼女でもないのに、当たり前のように陣の隣に並んで――彼の心を吸い取るだけ。
涙がこぼれそうになった。
だけど、陣の前では泣きたくなかった。