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「みあ、王子とはどう?」
ひゅかの質問に、私は微笑むだけで何も言わなかった。
ひゅかには、二人の間に起きたことを包み隠さず伝えていた。
私の想いにも、当然気づいているだろうけど、ひゅかは何も言わなかった。
その姿勢がありがたくて、嬉しかった。
「無理だけは、しないでね。ただでさえ大変なんだから」
「うん。わかってる。ありがとう」
無理だけはしたくない。
心があげている悲鳴を無視してきた今、亀裂はどんどん大きくなって私を苦しめていた。
陣の顔を見るたびに、自分のものにできない悔しさや嫉妬で狂いそうになった。
そしてそんなわがままな自分に嫌気がさして、一人で泣くことしかできなくなっていた。
陣は気づいてはいないだろう、私の苦しみには。
陣は平気な顔で、佐和さんの話をするし、私と一緒にいる。
でも、私はそのたびに心がえぐられるような衝撃を受けて、苦しくてたまらなくなるんだ。
そして、思うようになった。
陣も私のように苦しめばいいのにと。
私の想いに気づいて、困ればいいのにと。
そして、そんなふうに思う自分が嫌で、また迷う。
全ては優柔不断な私が選んだ、自業自得な結果だというのに。
私の淡い恋心は、いつのまにか確かな恋へと変わって、そして今は苦しみに変わっていた。
大学の食堂で陣と一緒にいた。ひゅかも一緒だ。
「俺、卒業できるかなぁ」
陣が不安そうにため息をつく。
「さぁ、どうだろ」
「うわ、みあそんな酷いこというわけ。最悪」
私の言葉に、陣がすねる。
「でもまぁ、留年したら慰めてあげるから」
ひゅかがそう言って笑う。