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「でも、卒業したら社会人だよな」
「想像できないなぁ」
陣の言葉に、私も将来像を考えてみる。
働いている自分の姿は、まだ想像できなかった。
「なんか、怖い気もするな」
「うん。でも、いつまでも親のすねはかじってられないから」
見えない未来は怖いし、尻込みをしてしまう。
だけどそうやって臆病なままじゃ前には進めない。
だから、私ももう決めていた。
これからどうするのかを。
「しかし、王子、彼女と長いねぇ」
「ん? ああ、中学のときからだから、もう八年近いのか」
「んじゃあ、彼女のことも考えなきゃだね、結婚とか」
私は何食わぬ顔で言う。心を裂いているような痛みを覚えているくせに。
陣は困ったように笑った。
「結婚とかは早すぎるだろ、どう考えても」
「まぁ、結婚式には呼んでね」
ひゅかが言う。でも私は何も言えなかった。
おそらく私には祝福できないから。
私はそんなに大人じゃなくて、陣を独占したいと思っているから。
「早く自立したいな……」
ぼそりと、つぶやいた。
自立したい。
自分の力で生きていけるようになりたい。
強くなりたい。
陣に、誰かに、依存しなくても生きていけるように。
強い心が欲しい。
この張り裂けるような痛みに耐えられる、強い器が欲しい。