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「みあ」

 食事が終わって、次の授業のある部屋に移動しようとしたとき、陣が私を呼び止めた。

「ひゅか、ちょっと先行っててくんない?」
「ん? わかった。席とってる」
「陣?」

 陣が食堂の外にあるベンチに誘う。

「何?」
「いや、みあ、最近元気ないかなって……」
「…………」

 元気ないよ。

「別に、なんでもない。忙しいだけ」

 私は最近、陣に冷たい。
 一緒にいるだけで、心が張り裂けそうになるから。

「忙しい、そっか……」

 陣は言葉を捜しているようだった。でも、私は立ち上がって、

「ひゅかに悪いから、もう行こう」
「みあ」
「だから何?」
「怒ってる?」

 陣は、無神経だ。
 こんなに私は陣を想っているのに、陣はそれに気づいてないとでもいう気なのか。
 私がどれだけ苦しんでいるかも、気づいていないというのか。

「怒ってない」


 最近は、陣に対して怒りにも似た感情が生まれていた。
 一緒にいるだけでこんなに辛いのに、陣は平気そうな顔をしている。
 陣のせいで私は陣にのめりこんだというのに、そんなこともわかっていない。

 でもそれは、ただの八つ当たり。
 陣のせいだけじゃない。
 私のせいでもあるのに。
 私は、なんて最低の人間なんだろう。
 きっとだから、私は幸せにはなれないんだ。

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