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「それで、準備は進んでる?」
「うん」
就職活動の合間に、私は引越しの準備も進めていた。
陣には何も言っていない。
「あとは卒業と同時に、携帯も番号変えて、引っ越すだけかな」
ひゅかは呆れたように、ため息をついた。
「みあ、なんかたくましいな」
「たくましくなんかないよ。実際、凄く怖いから」
私は笑った。
「凄い怖いよ。陣と離れられるのか。だけど、頑張らなくちゃいけないじゃない」
「……そうだね。あたしはいつも応援してる」
「じゃあ、早速、今度引越しの準備も手伝ってね」
ひゅかは笑顔でうなずいた。
私は、陣に会うたびに嘘を重ねた。
破るに決まってる口約束ばかりした。
「みあは、今のアパートから職場に行くんだろ?」
「そうだよ」
これだって嘘。
本当は卒業と同時にアパートから出て、陣の知らない町へ行く。
「内定取れたら安心なんだけどなぁ」
「取れるといいね」
陣は面接を受けた会社の内定を待っている状態。
結果が出るのは卒業式の後らしい。
「卒業式の後は、いつ会えそう?就職祝いしよう」
「就職も決まってないのに?そうだな。実家に顔出すから三日は会えないよ」
これだって嘘。本当は引っ越すからだ。
「んじゃさ、十九日とか会おう?」
「うん、いいよ。じゃあ、一時にアパートに迎えに来て」
「わかった」