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「?」
私の疑問に気づいたのか、木戸さんはくすっと笑って、
「このプロジェクトが終わったら、飲みに行こうな」
「はい」
私がうなずくと、木戸さんは悪戯っ子のような顔で、
「二人でね」
「えっ?」
バリバリの仕事人である木戸さんは、さっさと次へと移ってしまっている。
今のは、デートのお誘いだと受け取って良いのだろうか。
そう考えると、少しむずがゆいような、恥ずかしさに襲われた。
木戸さんには、実は密かに憧れている。
どんな無茶も、やってのけてしまう、スーパーマンなのだ。
木戸さんだけではなく、この職場にはたくさんの暖かい人達がいる。
こんな職場で働いていることを、私は感謝している。
木戸さんのお誘いも、前向きに考えてみようと思った。
そろそろ、前に進んでもいいかもしれないと思った。
翌日、約束の三十分前に、私は受付にいた。
「よっ、佐川ちゃん」
木戸さんはやっぱり、早めに来た。
木戸さんより早く着いたことに、安心する。
それと、プロジェクトのマネージャーを務める河島薫課長も一緒だ。彼女は河島京社長の奥様だ。黒い髪をポニーテールにした、背の高い美人で、本当に格好良い。
課長は私を見とめると、
「みあっち、今日も可愛いわね」
「課長も、とても素敵です」
こんなスレンダーな美女に言われてしまったら、照れてしまう。