急性大好き症候群
実際裕也は、この学校の女子の間で絶大な人気を誇っている。


綺麗顔で頭もよくて、サッカー部で活躍して、みんなに優しくて。


モテないはずがない。


一応あたしの彼氏でもあるけど……。


「今日早いな」

「あ……うん。今日はちょっと早く目が覚めたから」


嘘。


君に会いに来たんだよ。


喉の奥まで出かかった言葉を必死に飲み下す。


「裕也、勉強?」

「予習な。今日英語当てられるから」

「あ、そうだった。あたしも当てられるかな?」

「俺の席に近いからな」

「やばっ。すっかり忘れてた」

「まだ時間あるし、今からやれば間に合うよ」

「あ、英語の教科書忘れてきた……」


途端に裕也が吹き出した。


「はははっ! 珍しく早く来たと思ったら……くくっ。まじ、ウケるっ……」

「そんなに笑わなくたっていいじゃん……」


たかだか教科書を忘れてきただけだ。


口を尖らせるあたしを見て、裕也は更に声を上げて笑う。


「お前は相変わらず抜けてんのな」


そんな優しい目であたしを見ないで。


裕也のことを信じてみたくなる。


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