急性大好き症候群
麻尋ちゃんがあたしの顔を心配そうに覗き込んでくる。


こうやって見ると、普通の中学生だ。


とても可愛らしい。


前は太一の前だったからか、嫉妬が前面に出てて、正直いい気はしなかったけど。


今はあたしをそういう対象で見ていない目だった。


「……大丈夫ですか?」

「大丈夫。家も、すぐそこだし」

「……あの」

「ん?」


あたしが立ち上がってこの場を去ろうとすると、呼び止められる。


「少し、お話できませんか?」

「……あたしと?」


一瞬どきりとしてしまう。


あたしの脳内に蘇ったのは、祭りの日の夜のこと。


太一は言っていないだろうけど、女の子の勘は鋭いのだ。


もしかしたら……なんて思ってしまう。


あれから太一との関係は変わりなく、家庭教師は元々夏だけの予定だったし、今は太一が質問があればあたしと連絡を取って教える程度だ。


あまり乗り気はしなかったけどあたしは承諾した。


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