急性大好き症候群
「あの、さ、麻尋ちゃん」

「はい」

「弘樹のことは振ったんだよね」


麻尋ちゃんは黙って頷いた。


なんとなくほっとする自分がいた。


自分の弟に、他人の恋を壊すことをしてもらいたくはない。


あたし、だいぶ弘樹に肩入れしているなあ。


ブラコンではないんだけどな、あたし。


「太一にも話しました」

「へっ……」

「隠している方がいけないと思ったんです。私のことで二人の仲を引き裂きたくなかった。弘樹の気持ちは、太一も知ってましたから。口には出さなかったようですけど」

「いい子だね、麻尋ちゃん」


この子は、本当にいい子だ。


自分のことだけで相手を振り回さない。


自分だけじゃなく、他人のこともちゃんと思っている。


「……そうですかね。ただ単に臆病なだけですよ」


麻尋ちゃんは苦笑しながらコーラをストローで啜った。


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