急性大好き症候群
随分長居をしてしまった。


それほど話し込んだつもりはなかったのに、二時間近くいてしまった。


高校生ならまだしも、中学生がこの時間まで外をうろついていたら、親が心配するだろう。


「麻尋ちゃん、ごめんね、付き合わせちゃって。帰ろうか」


幸いにも、ここは中学校のすぐそばだ。麻尋ちゃんの家も確か中学校の近くだったはずだ。


「送ってくよ。女の子一人じゃ心配だし」

「いえ、大丈夫です。ここの道路の向かい側なんです、家」

「だいぶ近いな……」

「あの、できればでいいんですけど、弘樹に伝言、頼んでもいいですか?」

「いいよ」

「……『弘樹のことは決して嫌いじゃない』って」

「……うん。わかった」


伝えとくよと言うと、麻尋ちゃんは可愛らしい笑顔を見せた。


不覚にも、女のあたしでも一瞬ドキッとしてしまったくらい綺麗だった。


二人の男から好かれるのも無理はない。


あたし達は店から出て、別れた。


< 109 / 198 >

この作品をシェア

pagetop