急性大好き症候群
「俺の隣来れば? 教科書一緒に見ねえ?」

「え、いいの?」

「いいよ。まだ誰も来てないし」


裕也にとっては何気ない一言だったんだろう。


一瞬息が詰まる。


その言葉の裏に潜む真実を垣間見た気がした。


誰か来たら……。


あたしと一緒にいるのは誰にも見られたくないってこと……?


「唯織?」


裕也の声で我に返った。


「あ、うん。じゃあ見せて」


あたしは裕也の左隣の席に座って、二つの机をくっつける。


机と机に教科書がまたがり、あたしは机にノートを広げる。


真っ白なノートに、アルファベットを綴っていく。


ノートの見開きで左側が英文、右側に訳。


今日の範囲の英文は、比較的短かった。


さっさと英文を写して、次は日本語訳……。


ふと視線を感じて右側に顔を向けると、ばっちり裕也と目が合ってしまった。


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