急性大好き症候群
教室に行くと、中では予想通りのメンツが揃っていた。


つまり、裕也と美紗。


二人が沈みかけた夕日に照らされて口づけを交わしていた。


まあまあ、こんな廊下から見られてもおかしくないところで堂々とやってらっしゃいますこと。


この時のあたしはなぜか妙に冷静だった。


落ち込むのもいい加減懲り懲りだった。


このまま踵を返して戻りそうになったけど、かろうじて踏ん張った。


それじゃ今までのあたしと一緒じゃないか。いい加減学習しなさいよ。


太一と会ってから、あたしの中で何かしらの変化が起きていた。


ラブラブな二人を羨ましいと思いながら、あたしとは何が違うのだろうと考えた。


答えは単純明快。あたしが逃げないこと。


今もなおキスを続ける二人がいる教室の扉をわざと音を立てて開けた。瞬間、二人が離れてあたしを見る。


なぜかその瞬間が快感だった。


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