急性大好き症候群
「眠そうだね。今日は勉強はちょっと休んで、どうすればいいか考えようか」

「いや……勉強する」


そう言いながら、太一はテーブルに顔を乗せながら起き上がろうとしない。


「眠いんでしょ。そんなんじゃ、勉強しても効率上がんないよ。寝る前に暗記物やるだけでよしとすれば大丈夫」

「……ん」


目をとろんとさせて、あたしを見上げている。


上目遣い……やばいって。


いつもより可愛いって。


「勉強はしないけど、ちゃんと聞くんだよ。模試の結果を見てみると、太一は各大問の最後を解いてないよね。わかんなくて?」

「……時間がなくて」

「なるほどね。後で見てみて、解けそうなの?」

「……半分くらいは」


いよいよ眠気に負けてきたのか、太一の声が小さくなって聞きづらくなる。


あたしは太一の顔に耳を近づける。


「ちょっと、太一、起きな」

「……起きてる」


みるみるうちに太一の瞼が下がっていく。


「……唯織」


太一の唇があたしの名前を紡いだ瞬間、あたしの心臓が激しく鼓動を打ち付けた。


「……太一?」


次の瞬間、あたしの右手が熱くなった。


太一の指があたしの手に絡み付いている。


自分の右手に意識を奪われているうちに、太一は寝息を立てて寝てしまった。


「……無自覚に誘われてもね」


これってあたしの自意識過剰?


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