急性大好き症候群
ただ、あたしと美紗の仲が本当に元に戻るにはかなり時間を要した。


美紗は部活には戻ってきたものの、あたしとの間にはしばらく気まずい空気が流れ、いざ二人きりで話そうとしても以前のようにどうでもいい他愛のないことを口にすることが困難だった。


一度深くひびが入ってしまった友情を直すことは容易ではなかった。


最近はようやく、美紗とクラスで二人きりでいても普通に話せるようになったけど。


あたしはテーブルの上に頭を置いて、太一の寝顔を眺める。


可愛い。


思わず頬が緩んでしまう。小動物みたい。


時計を見ると、既に夜の九時を回っていた。


ここにはあたし以外、太一を起こす人はいない。


最近、疲れてたらしいしな。内申に関わる最後のテストと言い、太一はここ最近毎日猛勉強をしていたらしい。


おかげで手応えはばっちりと満面の笑みで言ってたけど。


意外に強い力で手を握られているから、あたしもこの場から立ち去ることができない。振りほどくのもなんだか気が引ける。


これってさ、すごくいい状況じゃない?


寝顔を見られたお返しだ。


あたしはこのまま、太一の寝顔を堪能することにした。



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