急性大好き症候群
「でもさ、意外だよね」

「何が?」

「唯織ってさ、ほんと普通じゃん」

「何それ」

「特別可愛いわけでも美人でもない。至って平均的。なのに、経験したことは人並み以上。高校生で男と付き合って、やって、浮気されたんだよ。自分でもすごいと思わない?」

「思うけど、太一、いろいろ失礼だから」


「あ、つい」と太一がはにかんでみせる。


ふてぶてしい奴だ。


「そしたら太一の方がもっとすごいけどね」

「そうかな。普通だって」


こいつは暗に自分がイケメンだということを認めているのだろうか。


あたしのことは意外で、自分は普通って……。


「そういえば太一、最近麻尋ちゃんとは大丈夫なの?」


あたしは二月程前に話した麻尋ちゃんが気にかかっていた。


お互い思い合っているからこそ、女の子は不安になることだってあるだろう。


「ん、大丈夫。受験勉強してるから最近は放課後一緒に帰るくらいしかしてないけど」

「ふーん」


一緒に帰るだけって言っても、こいつはそのついでにいろいろやってるんだろうな。


最後まではしないとしても、キスとか、そういうもの。


そう思ってしまった自分に嫌気がさす。


ご飯中だって言ったのは自分なのに。


< 139 / 198 >

この作品をシェア

pagetop