急性大好き症候群
「まさか本当に受かっちゃうとはねえ」

「数学が簡単で助かった」


太一は本当に安堵した表情で、隣にいた弘樹が笑った。


「今年の数学、平均75点だってよ」

「弘樹は何点取ったの?」

「89点」

「お前、一回死んでこい」


そんな二人の会話が後ろから聞こえてくる。


平和で微笑ましい。


「はい、合格祝いね」


あたしは二人の前にケーキと紅茶のカップを置いた。


「姉ちゃん、俺は駅前の店のレアチーズケーキって言ったろ」

「唯織、俺は駅ナカの店のチョコレートタルトって頼んだよな」

「嫌なら食べんでよろしい。全部あたしが食べるから」

「姉ちゃん、太るぞ」


あたしが買ってきたのは、近所のケーキ屋のやつだ。


駅まで行くのはめんどくさいし、高いし、近所のケーキ屋も十分においしいんだから、我慢してもらいたい。


あたしは自分用のミルフィーユにフォークを入れる。


「二人とも、あたしの奢りっての忘れてるよね」

「ああ、姉ちゃん、顔が怖い」

「弘樹、ここはおとなしく食べよう」


全くもって、どうしてこの二人は生意気で無駄に顔がいいのか。


こんな二人が後輩として入ってくるなんて、ほんと変な感じだ。


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