急性大好き症候群
そんな(あたしの)平和をぶち壊したのは憎らしくも太一だった。
太一と弘樹が高校に入学し、あたしも三年生になって間もない時だった。
美紗とは今年も同じクラスになって、裕也とは離れたから、あたし個人としては嬉しかった。
三年生の教室は一階で、他学年もよく移動教室で一階の廊下を利用することが多い。
あたしはその時前日の宿題を終わらせるために夜中の二時まで起きていたから、寝ぼけ眼だったのだ。
だからボーッとしていたし、目の前の太一に気付かなかったあたしも悪い。
休み時間にトイレに行って廊下をぼけっとしながら歩いていたら、いきなり手を掴まれた。
え? と思う暇もなく、あたしは背中を壁に押し付けられ、顔を誰かの胸板に押し付けられていた。
「な、なっ……」
わけのわからぬまま声を出すと、耳にその人の息がかかった。
「ちょっと、黙ってて。この場をやり過ごすまで」
つい最近聞いた高めの男の声。
「……太一」
あたしが囁くと、太一は耳に口を近付けたまま頷いた。
太一と弘樹が高校に入学し、あたしも三年生になって間もない時だった。
美紗とは今年も同じクラスになって、裕也とは離れたから、あたし個人としては嬉しかった。
三年生の教室は一階で、他学年もよく移動教室で一階の廊下を利用することが多い。
あたしはその時前日の宿題を終わらせるために夜中の二時まで起きていたから、寝ぼけ眼だったのだ。
だからボーッとしていたし、目の前の太一に気付かなかったあたしも悪い。
休み時間にトイレに行って廊下をぼけっとしながら歩いていたら、いきなり手を掴まれた。
え? と思う暇もなく、あたしは背中を壁に押し付けられ、顔を誰かの胸板に押し付けられていた。
「な、なっ……」
わけのわからぬまま声を出すと、耳にその人の息がかかった。
「ちょっと、黙ってて。この場をやり過ごすまで」
つい最近聞いた高めの男の声。
「……太一」
あたしが囁くと、太一は耳に口を近付けたまま頷いた。