急性大好き症候群
いや。でも、待て。


何、この状況は。


あたしは太一に壁に押し付けられて、太一はこの場をやり過ごそうとしている?


何、それ。わけがわからないんですけど。


「「太一くーんっ!!」」


何人かの女子の甲高い声が聞こえてくる。


ああ、太一、そりゃモテるよな。


混乱している頭で理解する。


「……唯織」

「え?」


太一の息が耳の中にかかって、思わず反応しそうになる。


「……後で殴らないでね」


は? と思う前に、あたしの口呼吸は不可能になった。


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