急性大好き症候群
「もしかして……嫌だった?」


太一があたしを見上げて聞いてくる。


こんなの、ずるい。


太一に見上げられると可愛い。甘えを乞う犬みたい。
 

「だって、太一には麻尋ちゃんが……」


ドキドキしてしまって、言葉がうまく出てこない。


「……じゃあ、麻尋がいなかったらいいの?」


太一に腕を引っ張られて、あたしも太一の隣に座る。


太一があたしの瞳を覗いてくる。


「……何言ってんの?」

「俺のことなんか関係なしに、唯織の気持ちを聞いてんの」


だから、ずるいって。


太一はあたしに何を言わせたいの?


好きな人にキスされて嬉しくないはずがないでしょうが。


太一はそういう答えを求めているの?


そんなの、あたしにわかるはずもない。


からかってるだけかもしれない。


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