急性大好き症候群
「……年上をからかって楽しい?」


答えたくなかったから、わざと言ってやった。


太一には、知られたくないと思った。


「俺、本気だけど」


あたしの腕が引っ張られて、あたしが太一に迫る形になる。


太一の目が笑っていない。


やばい、この雰囲気。


「いきなりで……よく覚えてないから。……嫌とかそんなんじゃなくて………」


今は、いやこれからもだけど、太一にあたしの気持ちは言うべきではない。そう思ったあたしの口からは見事な出まかせが出てきた。


これだったら太一も何も言えないだろう。


寂しさが胸の中を掠めるけど、気にしない。


この場で振られるよりよっぽどましだ。


なんとか最悪の事態は逃れたと一人で安心していたら、


「じゃあ……もう一度、する?」


太一が爆弾を投下してきた。


「なっ……」


頭の中で理解した時既に遅し。


太一の顔が目の前にあった。


「太一、ちょっと…………」


太一の腕から逃れようと力を込める。でも、動けない。


「俺、言ったでしょ? ……最後までしなきゃ浮気に入らないって」


頭が真っ白になった。


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