急性大好き症候群
「でもさ、唯織、受験終わったんだから、いい加減決着つけてきなよ」


美紗がシャープペンであたしを指差してきた。


「何を?」

「決まってるじゃない、太一くんのこと」

「いや、あたしは何も」

「あるわよ。まだ好きなんだから」


断言ですか。


全く、自分のことでいっぱいいっぱいなのに、どこから他人に気遣うエネルギーは出てくるのか。


そのエネルギーを勉強に回してもらいたい、と元受験生らしいことを言ってみる。


「私はね、唯織、去年唯織に悪いことをしたなって思ってんのよ。冷めきってきたカップルとは言え、唯織の気持ちはまだわずかにでも裕也の方にあったし、裕也にも少なくとも唯織に対する情はあったわよ。それを私が無理やり壊す形になっちゃって」

「あたしに対して情があったら、裕也は自分から別れを告げてきたでしょうよ」


今更怒る気にもならないけど、彼女のあたしをストラップだと思っていた男だ。あたしに対して気持ちが入っていたのなら、けじめくらいつけたってよかっただろう。


思えばあたしって、けっこう最低な男と付き合ってたのか。


その男は今、美紗の彼氏だけど。今のところ二人の関係は良好らしいから、口出しすることなんてないけど。


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