急性大好き症候群
部屋を出てトイレに向かいながらこれは一体どうしようと考えて、トイレを出て部屋に向かいながらさっさと帰るべきかと悶々と頭を悩ませた。


話し上手でないから逃げてしまうのだ。


損な性格だと思う。


部屋のドアを開けてまず最初にあたしの目に飛び込んできたものに、思わずガチンと体を硬直させてしまった。


「あ……ごめんごめん」


太一はあたしの目の前でTシャツを頭から被った。


このタイミングで着替えますか。


太一はジャージに着替えていた。


いや、あたしが言いたいのは着替えではなくて。


太一の裸の上半身を見てしまったから。


引き締まっていて、でも上腕は太くて。


中学で空手をやって、今はバドをやってるから、そりゃあ腕が太くなるのは当たり前なんだけど。


彫刻みたいに美しかったから、一瞬見惚れてしまった。


「何固まってんの。男の裸なんて初めてじゃないでしょ。弘樹も家にいるんだし」

「そうだけど……」

「それとも何? 俺の裸に欲情したとか?」


くすっと笑ってくるもんだから、あたしは太一を睨みつけた。


図星だけど。ごもっともだけど。


男の裸を見てキャーキャー騒ぐほどあたしはウブではない。


ただ、細いとしか思ってなかった太一の体が想像以上に美しかったから、そう思ってしまっただけで。


ばっかじゃないのと呟いて部屋に入る。


「ねえ太一、あたしそろそろ……」

「唯織……」


囁くように呼ばれて、あたしは一瞬のうちに視界が暗くなった。


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