急性大好き症候群
「弘樹、ご飯だって」

「わかったよ……今行くから」


詩織を腕に抱えたままむくりと弘樹が起き上がる。


何度見ても、弘樹と詩織はそっくりだ。顔のパーツの位置がきっちりと合っている。


まあ、それってつまりあたしも二人とそっくりってことなんだけど。


弘樹はもともと反抗期はあまりない。口数は少ないけど、言われたことはちゃんとやる。


「……姉ちゃん」

「何?」

「……太一と、今会ってるでしょ」

「それがどうかした?」

「体の関係もあるよね」

「……それ、誰かから聞いたの?」


太一とのことはあたしは美紗以外には話していない。太一はたぶん誰にも話していないはずだ。


話したら自分の立場が悪くなることは必至だから。


「いや、聞いてない。俺の予想」

「今、疑問形じゃなかったよね」

「……太一はやめた方がいいよ。好きになるの」

「は?」

「親友だからわかるけど、あいつはまじめんどくさい。俺まで精神やられてる」

「……どういうこと?」

「まあ、弟としての忠告。詩織、ご飯食べよー」


弘樹はぼんやりとしたまま部屋を出ていく。詩織は弘樹の腕の中ではしゃいでいた。


弘樹まで精神やられてるって、どういうこと?


< 175 / 198 >

この作品をシェア

pagetop