急性大好き症候群
皮肉だ。


姉はあるカップルの彼氏の浮気相手で、弟は彼女の浮気相手。


悪いのは明らかにあたし達。


あたし達姉弟は、面倒なことに巻き込まれる星の下にでも生まれたのだろうか。


不意に太一があたしに抱き着いてきた。


あたしの胸に顔を埋めて、泣いていた。


「俺が……何をしたっていうんだよ。……思ってきたのは、……ずっと麻尋だけなのに……。麻尋しか、見てこなかったのに……何がいけなかったんだよ…………。なあ唯織、俺が悪いのかな…………。麻尋の苦しむ顔が見たくなくて唯織に逃げた…………俺が、悪いのかな…………」


あたしはここにきても何も言えなかった。いや、言いたくない。


太一を責めるようなことを、口にはしたくなかった。


あたしは太一を抱き締めた。


大きいと思っていた太一の体は、ひどく小さく感じた。


「わかってるんだ…………悪いのは、俺なんだよ……。麻尋から逃げて……唯織と弘樹に、悪役をやらせて……。弘樹は……悪くない……。弘樹が、簡単に麻尋を抱くわけない…………。わかってたんだ。……逃げたかった……自分のしたことから…………。俺は、俺…………」

「太一……わかったから」


あたしは太一を離して、唇を重ねた。


初めて自分からしたキスだった。


突然のことに、濡れた瞳を大きく開いて太一はあたしを見つめた。


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