急性大好き症候群
「唯織……?」

「太一、いいよ、あたしのせいにして」

「え……」

「一人で苦しまないでよ……」


あたしは太一の目元の涙を手で拭った。


そして再び唇を重ねる。


自分から触れた唇は、びっくりするくらい柔らかかった。


角度を変えて何度も唇に触れる。


太一はあたしにされるがままだった。


舌を太一の咥内に入れても、太一は抵抗を見せない。


舌が絡み合うと、太一の体の力が抜けていくのがわかった。


あたしは常に「されていた」方だから、やり方なんて全然わからない。


貪りながら、下手でごめんねと心の中で謝った。


「唯織……」


唇を離すと、太一の息がわずかにあがっていた。


あたしがそうさせたのだと、なんだか嬉しくなる。


あたし、実はSなのかな。


目が潤んで、わずかに見上げてあたしを見ている太一を見たら、歯止めがきかなくなった。


首筋に唇を寄せて、肌に吸い付く。


「んっ…………」


太一がぴくんと肩を震わせる。


今だけはあたしを見ればいい。


あたしを感じて、弘樹も麻尋ちゃんも忘れればいい。


どうせ最初から勝負は決まっていたのだ。ならば、少しくらいあたしを見てもらったっていいじゃないか。


太一の首を攻めながら、あたしは変な感情に支配されていた。


唇が鎖骨まで下りて、ワイシャツのボタンに手をかけたとき、その手を掴まれた。


< 182 / 198 >

この作品をシェア

pagetop