急性大好き症候群
その週の土曜日は練習試合で、十キロ離れた高校へ行かなければならなかった。


地下鉄とJRを乗り継いで、帰りは美紗と通り道の街に寄った。


「この服可愛い!」

「このキュロットのデザインすごい!」

「でも3980円か~。やっぱり街は高いわ~」

「仕方ないよね。地元で似たやつ探して買うしかないよね」

「でもアクセは可愛いなあ」

「私ネックレス欲しいんだよね~」


街の店の服やアクセなどを一通り見て、駅の中を通り過ぎようとしていた。


「あ!」


美紗がいきなり高めの声をあげた。この声を発するときは大抵、


「何?美紗好みのイケメンでも見つけた?」

「あれ」


美紗がこっそりと前方を指差す。


「ん?」


美紗の指の先を目で追う。


「あれ、太一くんじゃない?」

「へ?」


前方をガン見してみる。


「いなくない?」

「あそこだって。ジャージ着てる集団にいるの!」

「あっ」


見つけて、あたしは思わず大きな声を上げてしまった。傍で道行く人が、一斉にあたしを振り返ったほどだった。


「ばかっ、声デカすぎよ」

「つ、つい……」

「あ、唯織」


太一くんにも見つかってしまった……。


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