急性大好き症候群
「ん? 俺?」

「そうそう。何やってんの?」

「何だと思う?」


太一くんがにやりと意地悪そうに笑う。


その顔に、あたしの心臓が、小さく音を立てた。


…………あれ?


「ん~。サッカー?」

「はずれ。悪いけど、中学校ではメジャーじゃないんだよな」

「メジャーじゃない? じゃあ、外じゃないってこと?」

「まあな」

「ん~。卓球」

「太一くんに似合わない」

「他に中学で、なくない?」

「まさかのまさかで、運動してないとか」

「してるよ。じゃなきゃ集団で部活のジャージ着てるわけねーじゃん」

「太一~。もったいぶるなよ」


太一くんの横にいた男の子がこちらを振り向いた。


「盗み聞きかよ。趣味悪い」

「聞こえたんだよ。そこらへんの高校生捕まえてんじゃねーよ」

「そこらへんじゃねーよ。中学の先輩」

「え。まじか」

「バレー部だけど……」

「先輩、こいつもったいぶってるけど、大したことないっすよ。空手部」

「「空手え!?」」


あたしと美紗は、同時に叫んでいた。


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